Loves only you
友紀がアポを取り始めると、奇妙なことが起きた。漆原の話や、高木の報告書をもとに、優先順位が高いと思われるオーナ-や取引先に連絡をしたのだが、既に他社に決まっていたり、高木からの連絡が滞っていて、不快感を露にされるケースが相次いだのだ。


(どういうことなの・・・?)


困惑気味に漆原の顔を見ると


「いや、ある程度見込みが話が進むと、高木さん、僕を外して、後は次長と・・・って前の次長ですけど、直に相談してて。だから僕としては、僕が絡んでない案件こそ重要性が高いと言う判断でして・・・。」


ゴニャゴニャと言い訳を始めるから


(なに、それ・・・。)


友紀は言葉を失い、思わず滝を見るが、彼は知らん顔で、書類を読みふけっている。


「わかった。とりあえず、今日はここまでにしよう。」


漆原に告げると、オフィスを出た。自販機に行って、コーヒ-を買い求め、それを口に運ぶ。


(葉那さんの言う通り、私ひょっとしたら、なんかとんでもないことに関わらされてるのかも・・・。)


思わずため息が出る。あれやこれやを考え、心を落ち着けて、友紀がオフィスに戻ると、退勤時間を既に過ぎているからか、滝以外の人影は見当たらなかった。


友紀が戻って来たのを、気に留める様子もなく、滝は相変わらず書類とにらめっこをしている。そんな滝のデスクの前に、友紀は立った。


「なんだ?」


顔を上げないで、滝は尋ねる。


「どういうことなんでしょうか?」


厳しい表情で言う友紀に


「お前でもそんな顔をするんだな?」


と言いながら、滝は顔を上げた。


「おっかない顔だな。オフィスのアイドルのそんな表情を見たら、ウチの男連中が幻滅するぞ。」


珍しくニヤニヤしながら、そんなことを言って来た滝に


「からかわないで下さい!」


友紀の方も、珍しく声を荒げる。それを見た滝は


「どういうことって。つまり・・・こういうことだ。」


そう言って、表情を改めた。そして


「明日はこのリストをもとに連絡を取ってみろ。」


と言うと、ポンとペーパーを友紀の前に放り出すように置いた。
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