Loves only you
⑤
着任以来の冷たく厳しい滝の言動に、何度も心折れそうになりながら、それでも友紀は『この世の中に本当に悪い人なんて、1人もいないんだよ』という母の教えを自分に言い聞かせて来た。
しかし先ほどの彼とのやり取りは、さすがに
(なんなの、この人・・・。)
という感情を抱かざるを得なかった。
「とりあえず、私を信頼していただいたようで、ありがとうございます。」
そんな皮肉の1つも言ってやりたかったが、それすら言う気力も湧かずに、重い気持ちを引き摺りながら、友紀は会社を後にした。
(こんな時に、おじさんたちは、一杯飲んで、愚痴を言い合いたくなるんだろうな・・・。)
就職して4年、もちろん友紀にも仕事で辛い時、悲しい思いをしたことが何度もある。しかし、今の自分はひょっとしたら、就職してからどころか、これまでの人生で一番落ち込んでいるかもしれない、そんな気すらしていた。
帰宅しても、心は晴れず、言葉少なに食事を済ませると、友紀は早々に自室に引き上げた。
扉を閉め、椅子にポスンと腰を下ろした友紀は
(ア~ァ、明日会社行きたくない。というより次長に会いたくない・・・。)
そんな詮無いことが浮かんで来て、友紀はまた、ため息をついていると、ノックの音が耳に入って来る。
「友紀、入るわよ。」
扉が開き、優美が入って来た。
「どうしたの?元気ないけど、なにかあったの?」
いつもは、仕事帰りの疲れた時も笑顔を絶やさない娘の様子がおかしいので、心配になったようだ。
ううん、なんでもない、大丈夫・・・母に心配を掛けまいと、そう答えようとした友紀だったが
「お母さんは間違ってるよ。」
思わずそんな言葉が、口をついていた。
「えっ、なに?」
突然の言葉に、戸惑いながら聞き返して来た母に
「お母さんはこの世の中に、本当に悪い人なんか1人もいないって、いつも言ってるよね。でもそんなことはあり得ないよ。」
友紀は厳しい口調で言うと、今度来た上司が底意地が悪く、冷たい性格で、先輩の1人は目の敵にされて、仕事から外され、自分にもいかに冷たく厳しい態度で接してくるかを訴えた。
そんな娘の言葉をウンウンと頷きながら聞いていた優美は
「そう、それは大変だね。」
優しい表情で言った。
しかし先ほどの彼とのやり取りは、さすがに
(なんなの、この人・・・。)
という感情を抱かざるを得なかった。
「とりあえず、私を信頼していただいたようで、ありがとうございます。」
そんな皮肉の1つも言ってやりたかったが、それすら言う気力も湧かずに、重い気持ちを引き摺りながら、友紀は会社を後にした。
(こんな時に、おじさんたちは、一杯飲んで、愚痴を言い合いたくなるんだろうな・・・。)
就職して4年、もちろん友紀にも仕事で辛い時、悲しい思いをしたことが何度もある。しかし、今の自分はひょっとしたら、就職してからどころか、これまでの人生で一番落ち込んでいるかもしれない、そんな気すらしていた。
帰宅しても、心は晴れず、言葉少なに食事を済ませると、友紀は早々に自室に引き上げた。
扉を閉め、椅子にポスンと腰を下ろした友紀は
(ア~ァ、明日会社行きたくない。というより次長に会いたくない・・・。)
そんな詮無いことが浮かんで来て、友紀はまた、ため息をついていると、ノックの音が耳に入って来る。
「友紀、入るわよ。」
扉が開き、優美が入って来た。
「どうしたの?元気ないけど、なにかあったの?」
いつもは、仕事帰りの疲れた時も笑顔を絶やさない娘の様子がおかしいので、心配になったようだ。
ううん、なんでもない、大丈夫・・・母に心配を掛けまいと、そう答えようとした友紀だったが
「お母さんは間違ってるよ。」
思わずそんな言葉が、口をついていた。
「えっ、なに?」
突然の言葉に、戸惑いながら聞き返して来た母に
「お母さんはこの世の中に、本当に悪い人なんか1人もいないって、いつも言ってるよね。でもそんなことはあり得ないよ。」
友紀は厳しい口調で言うと、今度来た上司が底意地が悪く、冷たい性格で、先輩の1人は目の敵にされて、仕事から外され、自分にもいかに冷たく厳しい態度で接してくるかを訴えた。
そんな娘の言葉をウンウンと頷きながら聞いていた優美は
「そう、それは大変だね。」
優しい表情で言った。