Loves only you
(次長・・・。)
目にしたのは、友紀が見たこともない満面の笑みで、1人の女児を抱き上げている滝の姿だった。
一瞬見間違いかと思った。滝が自分の生活圏内に現れるなんて、想像もしてなかったし、なにより、滝はバツイチだと、葉那から聞いていたからだ。
だけど今、滝は会社での彼からは想像も出来ないような表情で女の子を抱きしめ、女の子の方もキャッキャ言いながら喜び、甘えている。
どう見ても、父親と娘の交歓の光景がそこにあった。そこに
「雅也。」
と呼び掛けながら、1人の女性が。
「おう咲良、ママ友との話は終わったのか?」
「うん、ありがとう。」
「じゃ、帰るか。親父とおふくろが、首を長くして待ってるから。」
「そうね。陽葵、お手々繋いで帰ろう。」
「うん!」
母親であろうその女性の言葉に、元気よく頷いた陽葵と呼ばれているその子は、右の手を滝に、左の手を母親に預けると、元気よく歩き出す。
「ばぁばが陽葵の大好きなカレ-作ってくれたぞ。」
「やったぁ。陽葵、お腹ペコペコだよ~。」
「よかったわね、陽葵。」
そんなことを話しながら、その光景を呆気にとられて見ている友紀には全く気が付かないまま、滝は歩いて行った。
(次長には、あんな綺麗な奥さんも、可愛いお子さんもいたんだ・・・噂なんて、いい加減なもんだな。)
そんなことを考えていた友紀は、ハッとしたように
(あっ、遅刻しちゃう。)
慌てて駅に向かった。
この日は、大学時代の友人たちとショッピングと食事を楽しむことになっていた。待ち合わせ場所に着き、友人たちと合流した友紀は、賑やかに歩き出した。
気の合う仲間たちとの久しぶりの時間を、楽しみにしていたはずなのに、しかしなぜか心弾まない。
カフェに入って、おしゃべりに花を咲かせていても、ふと心、ここにあらずの状態になって
「どうしたの、友紀?なんかあった?」
友人から心配されて
「ううん、大丈夫だよ。」
そう答えて、取り繕うように笑顔を浮かべるが、なにかもやもやしたものが、胸の中に痞えている気がして、仕方がない。
(どうしちゃったんだろう、私・・・。)
自分でも理由がわからないまま、時が過ぎて行き、気が付けば解散する時間に。またねと笑顔を交わして、家路についた友紀。
自宅の最寄り駅に帰り着き、歩き出すと、やがてすっかり人気のなくなった幼稚園が見えて来た。その瞬間、昼間の滝の楽しそうな笑顔が甦ってきて、友紀の心はズキリと痛む。気が付くと、友紀は足早に、その場を離れていた。
目にしたのは、友紀が見たこともない満面の笑みで、1人の女児を抱き上げている滝の姿だった。
一瞬見間違いかと思った。滝が自分の生活圏内に現れるなんて、想像もしてなかったし、なにより、滝はバツイチだと、葉那から聞いていたからだ。
だけど今、滝は会社での彼からは想像も出来ないような表情で女の子を抱きしめ、女の子の方もキャッキャ言いながら喜び、甘えている。
どう見ても、父親と娘の交歓の光景がそこにあった。そこに
「雅也。」
と呼び掛けながら、1人の女性が。
「おう咲良、ママ友との話は終わったのか?」
「うん、ありがとう。」
「じゃ、帰るか。親父とおふくろが、首を長くして待ってるから。」
「そうね。陽葵、お手々繋いで帰ろう。」
「うん!」
母親であろうその女性の言葉に、元気よく頷いた陽葵と呼ばれているその子は、右の手を滝に、左の手を母親に預けると、元気よく歩き出す。
「ばぁばが陽葵の大好きなカレ-作ってくれたぞ。」
「やったぁ。陽葵、お腹ペコペコだよ~。」
「よかったわね、陽葵。」
そんなことを話しながら、その光景を呆気にとられて見ている友紀には全く気が付かないまま、滝は歩いて行った。
(次長には、あんな綺麗な奥さんも、可愛いお子さんもいたんだ・・・噂なんて、いい加減なもんだな。)
そんなことを考えていた友紀は、ハッとしたように
(あっ、遅刻しちゃう。)
慌てて駅に向かった。
この日は、大学時代の友人たちとショッピングと食事を楽しむことになっていた。待ち合わせ場所に着き、友人たちと合流した友紀は、賑やかに歩き出した。
気の合う仲間たちとの久しぶりの時間を、楽しみにしていたはずなのに、しかしなぜか心弾まない。
カフェに入って、おしゃべりに花を咲かせていても、ふと心、ここにあらずの状態になって
「どうしたの、友紀?なんかあった?」
友人から心配されて
「ううん、大丈夫だよ。」
そう答えて、取り繕うように笑顔を浮かべるが、なにかもやもやしたものが、胸の中に痞えている気がして、仕方がない。
(どうしちゃったんだろう、私・・・。)
自分でも理由がわからないまま、時が過ぎて行き、気が付けば解散する時間に。またねと笑顔を交わして、家路についた友紀。
自宅の最寄り駅に帰り着き、歩き出すと、やがてすっかり人気のなくなった幼稚園が見えて来た。その瞬間、昼間の滝の楽しそうな笑顔が甦ってきて、友紀の心はズキリと痛む。気が付くと、友紀は足早に、その場を離れていた。