Loves only you
会社を出て、帰路についた友紀。駅に向かって歩きながら、胸の中に先ほどの滝との会話がよぎる。
長話をしてしまったと、滝は苦笑いをしていたが、確かに純粋な業務の話以外で、彼とあんなに会話を交わしたのは初めてだった。
そんな中で彼の口から、仕事に対する不安や愚痴がこぼれて来たのは、友紀には驚きだった。
(少しは私に心を許してくれたのかな?)
そう思うと正直、嬉しい思いもする。だが、その一方で、最後の滝の態度には、友紀の心は痛くなる。
「俺には妻も子もいない。そんなものは・・・俺の人生に現れることはないし、また必要もない。」
吐き捨てるように言った滝。あんなに感情を高ぶらせた彼の姿を目の当たりにしたのも初めて・・・いや、1度だけある。高木のことを調べていた滝がある時、フッと漏らした言葉。
「高木は、既婚者か・・・。」
その言葉を、友紀は偶然耳にしただけだったが、その時の滝から滲み出て来るような怒りというか憤りを感じて、驚いたのを覚えている。
それにしても、この前目撃したあの母娘が、滝の妻子ではないということが、友紀には信じられなかった。
確かに滝の左手薬指に指輪がはまっているのを見たことはない。もともとバツイチだと聞いていたし、あの光景を見た後も、仕事時は指輪を外す主義の人もいるから、特に気にもしていなかった。
あの時、滝が彼女たちを名前で呼び、子供を真ん中に3人で仲睦まじく歩いて行く後ろ姿は、どう見ても幸せな親子の姿にしか思えなかった。
しかし現実には・・・わざわざ嘘をついたり、結婚していることを隠したりする必要はないはずだから、滝が現在独身であるのは、事実なのだろう。
でもあの光景は、決して見間違えではない。だとすれば、滝と彼女たちの関係は・・・?妻子なんて必要ないと吐き捨てた彼と、あの時の彼がどうしても友紀には結びつかない。
(新井さんは昔の次長は、優しすぎるくらい優しい人だったと言っていた。今の私は、その言葉に頷ける。次長は厳しくて、冷たいだけの人じゃない。それは絶対に違う。多分、次長の本質は変わっていないんだよ・・・。)
友紀は思う。しかし現実の滝は、妻子などいらないと吐き捨て、人を信用しないと公言して、部下を必要以上に寄せ付けようともしない。
(次長になにがあったんだろう。「優しすぎるほど優しすぎる人」を何があそこまで変えてしまったんだろう・・・?)
知りたい・・・もっと滝のことを知りたい。友紀は今、切実にそう思っている。切ないくらいに、狂おしいほどに・・・。
長話をしてしまったと、滝は苦笑いをしていたが、確かに純粋な業務の話以外で、彼とあんなに会話を交わしたのは初めてだった。
そんな中で彼の口から、仕事に対する不安や愚痴がこぼれて来たのは、友紀には驚きだった。
(少しは私に心を許してくれたのかな?)
そう思うと正直、嬉しい思いもする。だが、その一方で、最後の滝の態度には、友紀の心は痛くなる。
「俺には妻も子もいない。そんなものは・・・俺の人生に現れることはないし、また必要もない。」
吐き捨てるように言った滝。あんなに感情を高ぶらせた彼の姿を目の当たりにしたのも初めて・・・いや、1度だけある。高木のことを調べていた滝がある時、フッと漏らした言葉。
「高木は、既婚者か・・・。」
その言葉を、友紀は偶然耳にしただけだったが、その時の滝から滲み出て来るような怒りというか憤りを感じて、驚いたのを覚えている。
それにしても、この前目撃したあの母娘が、滝の妻子ではないということが、友紀には信じられなかった。
確かに滝の左手薬指に指輪がはまっているのを見たことはない。もともとバツイチだと聞いていたし、あの光景を見た後も、仕事時は指輪を外す主義の人もいるから、特に気にもしていなかった。
あの時、滝が彼女たちを名前で呼び、子供を真ん中に3人で仲睦まじく歩いて行く後ろ姿は、どう見ても幸せな親子の姿にしか思えなかった。
しかし現実には・・・わざわざ嘘をついたり、結婚していることを隠したりする必要はないはずだから、滝が現在独身であるのは、事実なのだろう。
でもあの光景は、決して見間違えではない。だとすれば、滝と彼女たちの関係は・・・?妻子なんて必要ないと吐き捨てた彼と、あの時の彼がどうしても友紀には結びつかない。
(新井さんは昔の次長は、優しすぎるくらい優しい人だったと言っていた。今の私は、その言葉に頷ける。次長は厳しくて、冷たいだけの人じゃない。それは絶対に違う。多分、次長の本質は変わっていないんだよ・・・。)
友紀は思う。しかし現実の滝は、妻子などいらないと吐き捨て、人を信用しないと公言して、部下を必要以上に寄せ付けようともしない。
(次長になにがあったんだろう。「優しすぎるほど優しすぎる人」を何があそこまで変えてしまったんだろう・・・?)
知りたい・・・もっと滝のことを知りたい。友紀は今、切実にそう思っている。切ないくらいに、狂おしいほどに・・・。