Loves only you
そんなこんなで時が過ぎ、後期の講義がスタ-トした頃。その日もサークル活動後の呑み会が終わり、雅也と明奈は一緒に家路についた。


それは今や、いつもの光景。しかし、やや違っていたのは、いささかいつもより、明奈の酔いが回ってしまっていることだった。


「なぁ紀藤、大丈夫かよ。」


フラフラの明奈に雅也は言うが


「う~ん、大丈夫、大丈夫だってぇ~。」


と言いながら、雅也にしなだれかかる明奈。


「お、おい。しっかりしろよ。」


明奈に身体を預けられて、支えながらも困惑の表情を浮かべた雅也は


「なぁ、今日の紀藤はちょっとヤバい。誰か一緒に来てくれよ。」


普段から明奈と仲のよい村雨美和(むらさめみわ)を始めとした周りの女子に声を掛けるが、


「ごめん。そうしたいのはヤマヤマだけど、私たちも電車の時間が・・・。」


「そうなんだよ。だから滝なら安心して、明奈任せられるし、いつもみたいによろしくね。」


とまるで乗って来ない。


「じゃ、そういうことで、みんなお疲れ~!」


そして、その流れで解散が宣せられてしまい、結局雅也は明奈を押し付けられた形になってしまった。


「みんな冷てぇなぁ・・・。」


ポツンと独り言ちた雅也の困惑を知ってか知らずか、明奈はぺったりと張り付いて、半分眠っている。


「仕方がない、紀藤行くぞ。」


声を掛けると、明奈がコクンと頷き、雅也は彼女を支え、よろよろと歩き出した。多少、酒臭さが混じってはいるが、明奈の身体から、芳しい香りが漂い、更に


(いろんなところが、当たってる・・・。)


それはそれまで経験したことのない感触で


(女子の身体って、こんなに柔らかいんだ・・・。)


雅也はいよいよ困惑し


(頑張れ、俺の理性・・・。)


懸命に自分を叱咤激励する。悪戦苦闘すること約20分、さすがに限界を感じ


「紀藤、あそこの公園のベンチで少し休もう。」


明奈に声を掛けると、彼女は閉じていた目をパチリと開いて、周囲を見回す。


「あれ、ここ雅也くんちの近くだよね。」


「ああ、君んちはここから更に20分くらいかかる。だから少し・・・。」


と言いかけた雅也を遮るように


「じゃ、雅也くんの家でちょっと休ませて~。」


甘えた声を出す明奈。


「バ、バカ言うなよ!」


飛び上がらんばかりに雅也は驚くが


「私、もう限界~。」


明奈はそう言って、いよいよ雅也に密着して来る。
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