Loves only you
もう無理と言い張る明奈に負け、仕方なく雅也は彼女を部屋に運んだ。苦戦しながらカギを取り出し、ドアを開いた途端
「雅也くん、ゴメ~ン。」
と言うや、ベッドに向かう明奈。
「お、おい紀藤。」
驚いて声を掛けるが、明奈はサッサとベッドにもぐりこむと、スヤスヤと寝息を立て始める。
「マジかよ・・・。」
一瞬茫然としたあと、おずおずとベッドに近付くと
(可愛い・・・。)
その天使のような寝顔に少し見入っていた雅也だったが、やがて
(これっていわゆるお持ち帰りってヤツだよな・・・。)
と思い至って、固まってしまう。今、目の前に憧れの女子が、全く無防備の状態で、自分のベッドで眠っている。
(おい、どうするんだよ、これ・・・?)
「据え膳食わぬは男の恥」という言葉を、雅也も知らないわけではない。その欲望はある、人並みにある。
(今、俺が手を伸ばせば、みんなの憧れのマドンナの全てが手に入るんだ・・・。)
改めて、明奈の寝顔を見下ろした雅也は、思わず生唾を飲み込む。
(ごめん、紀藤。俺、もう無理だ。)
先程までの密着と言い、もう雅也の理性は限界だった。明奈の枕元にひざまずき、その可憐な唇に、自らのそれを重ねようとした時
「う~ん。」
明奈の口から、声が漏れ、雅也はハッと我に返る。
(俺は何をしようとしてるんだ・・・。)
慌てて首を左右に振る雅也。
(さっき俺は、今なら紀藤の全てが手に入ると思った。でも本当にそうなのか?紀藤の身体は手に入ったとしても、心は・・・心までこれで手に入るのか?それだけじゃない。『明奈のことを安心して任せられる』って言ってくれた村雨たちの信頼も裏切ることになる。俺は一時の欲望を満たす為に、他の全てを失い、サークルにもいられなくなる・・・。)
まさしく今、雅也の心の中で、天使と悪魔が激しい鍔迫り合いを演じていた。やがてその勝者が決まった時、雅也は静かに立ち上がった。
(少し、公園で頭冷やして来るか・・・。)
そう思った雅也が、部屋を出ようとした時だ。
「雅也くん!」
呼び止める声がする。その声の主は当然ひとりしかいない、驚いて振り返った雅也の目に
「どこに行くの?」
と言って、恨みがましい視線で自分を見る明奈が映った。
「雅也くん、ゴメ~ン。」
と言うや、ベッドに向かう明奈。
「お、おい紀藤。」
驚いて声を掛けるが、明奈はサッサとベッドにもぐりこむと、スヤスヤと寝息を立て始める。
「マジかよ・・・。」
一瞬茫然としたあと、おずおずとベッドに近付くと
(可愛い・・・。)
その天使のような寝顔に少し見入っていた雅也だったが、やがて
(これっていわゆるお持ち帰りってヤツだよな・・・。)
と思い至って、固まってしまう。今、目の前に憧れの女子が、全く無防備の状態で、自分のベッドで眠っている。
(おい、どうするんだよ、これ・・・?)
「据え膳食わぬは男の恥」という言葉を、雅也も知らないわけではない。その欲望はある、人並みにある。
(今、俺が手を伸ばせば、みんなの憧れのマドンナの全てが手に入るんだ・・・。)
改めて、明奈の寝顔を見下ろした雅也は、思わず生唾を飲み込む。
(ごめん、紀藤。俺、もう無理だ。)
先程までの密着と言い、もう雅也の理性は限界だった。明奈の枕元にひざまずき、その可憐な唇に、自らのそれを重ねようとした時
「う~ん。」
明奈の口から、声が漏れ、雅也はハッと我に返る。
(俺は何をしようとしてるんだ・・・。)
慌てて首を左右に振る雅也。
(さっき俺は、今なら紀藤の全てが手に入ると思った。でも本当にそうなのか?紀藤の身体は手に入ったとしても、心は・・・心までこれで手に入るのか?それだけじゃない。『明奈のことを安心して任せられる』って言ってくれた村雨たちの信頼も裏切ることになる。俺は一時の欲望を満たす為に、他の全てを失い、サークルにもいられなくなる・・・。)
まさしく今、雅也の心の中で、天使と悪魔が激しい鍔迫り合いを演じていた。やがてその勝者が決まった時、雅也は静かに立ち上がった。
(少し、公園で頭冷やして来るか・・・。)
そう思った雅也が、部屋を出ようとした時だ。
「雅也くん!」
呼び止める声がする。その声の主は当然ひとりしかいない、驚いて振り返った雅也の目に
「どこに行くの?」
と言って、恨みがましい視線で自分を見る明奈が映った。