若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「響子先生、おはようございます」

 出勤すると高橋先生が駆け寄ってきた。

「おはようございます。どうしました? 何かありましたか?」

「あ、いえ、何もないです」

 それは良かった。
 電話も呼び出しもなかったから大丈夫だとは思っていたけど、受け持ち患者に何かあったかとも思うとドキッとする。
 
「朝ご飯は?」

 高橋先生は私の手を見て、そこに何も持っていないのを見て聞いてくる。いつもなら持ってるコンビニおにぎりとかサンドイッチが今日はない。

「え? ……ああ、今日は家で食べてきました」

「珍しい、ですね」

 高橋先生は何故かすごく驚いた顔をする。
 いや、私だってたまには家で食べるぞ。本当にたまだにだけど。

「えーと、あの、昨日の男の人は……」

「ん? 男の人?」

 昨日は急患もなかったし、男の人と言うキーワードで思い浮かぶ患者がいない。

「あの、帰り際に……響子先生をお迎えに来ていた」

「ああ! 牧村さん!」

 思わずぽんと手を打った。
 そのまま、鞄を自席に置きに行く。で、牧村さんがなんだって?

「あの人、響子先生の彼氏ですか?」

 私の席までくっついてきた高橋先生から思いもかけない言葉が飛び出す。
 朝から恋バナ?  高橋先生ってこんなキャラだっけ。

「昨日のお弁当も、もしかして……」

「はい。お弁当、牧村さんが作ってくれたんです」

「え、本当に? でも、男の人でしたよ?」
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