若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
17.
 ピンポーン。
 ピンポーン。
 ピンポーン。

 ……ん? 呼び鈴? 誰?
 ふああっ。大きなあくびをしながら、ベッドの中で伸びをする。のっそりと起き上がると、もう外は真っ暗だった。
 よく寝た。今、何時だろう?
 ああそうだ。牧村さんが来るんだった。
 ぼんやり考えながら玄関に向かう。

「はい」

 ドアを開けるとそこにいたのはやっぱり牧村さん。

「こんばんは。すみません。寝てましたよね?」

「こん…ばんは」

 途中であくびを噛み殺しながら、挨拶を返し牧村さんを迎え入れる。

「二日ぶりですね。会いたかったです」

 玄関先で抱きしめられ、驚いて一気に目が覚めた。
 だけど何かしらの反応を返す前に、牧村さんはスッと腕をほどいた。

「大丈夫ですか?」

 ぼんやりしてると心配そうに顔を覗き込まれる。

「大丈夫、です」

 ふああぁっ。盛大にあくびをしながら返事を返す。

「すみません。今起きたとこで頭が働いてなくて」

「起こしちゃってすみませんでした」

「大丈夫ですよ。多分、寝過ぎなんで。……えーっと、今、何時でしょう?」

「七時前くらいです」

 もう、そんな時間か。
 ぶっ続けで十一時間ちょっとは寝た気がする。……寝過ぎだ。夜、眠れるだろうか?

「あ……どうぞ」

 ドアを手で支えて牧村さんを招き入れる。この数日で彼の存在にすっかり慣れてしまった。

「お邪魔します」

 牧村さんはそう言って小さく頭を下げ、玄関で綺麗に靴をそろえる。マメだなー。てか、女子力高っ。料理上手で面倒見が良くてお行儀まで良い。

 中に入りながら、

「疲れは取れました?」

 と聞かれて首を傾げる。そのまま首をぐるりと回すとボキボキ音がした。よく寝て身体が軽くなったというより寝過ぎた分だけあちこち凝ってるかも? ストレッチとかすれば良いんだろうけど、どうにも面倒でやる気になれない。
 んーっと両手を挙げて全身で伸びをしていると、牧村さんがクスッと笑った。
< 105 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop