若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「お茶でも飲みますか? コーヒーのが良いですか?」
「あ、コーヒー飲みたい! ……デス」
とって付けた丁寧語に、また牧村さんが笑った。
「タメ口で大丈夫ですよ」
「そう言うわけには」
六つも年上の人だし。
「むしろ、気安く話して欲しいのですが」
「んー、それは、またいずれ」
まだお試し期間だし。その先があるのかは分からないけど。
そもそも、牧村さんのが年上なのに言葉が丁寧過ぎると思うんだけど、崩す気ないのかな。
「じゃあ、コーヒー入れますね。さすがに豆は持ってきていないので普通のドリップコーヒーですが」
「いえいえ十分です」
ドリップコーヒーを持ってきてくれるってのが、十分すごいと思う。
私がまたあくびをしている間に、牧村さんはキッチンで手を洗ってポットにお湯を汲んでいた。
トイレに行って戻ってくると、小さな違和感。……なんだろう?
「あ、エプロンだ」
「ああ、そうなんですよ。さすがにスーツで料理はどうかと思ったので、せめてエプロンでもと思って」
そっか。さっきまでスーツ姿だった。今は上着を脱いで、ワイシャツの上に黒いエプロン。……ヤバイ。カッコいいじゃないか。
「テレビでも見てくつろいでいてくださいね」
「はーい」
反射的に答えてテレビを付けるとニュースが流れた。
放火があったとか、花粉がいっぱい飛んでいるとか。そんなニュースを見るともなしに見ていると、トンと目の前にマグカップが置かれた。
「お待たせしました」
仰ぎ見ると、牧村さんの満面の笑顔。
なんとなく気恥ずかしくなって下を向くと、ふわりと立ち上った湯気とともにかぐわしいコーヒーの匂いが漂ってきた。
「カフェオレだ」
「すみません。勝手にカフェオレにしてしまいました。大丈夫でした?」
「好きなんで嬉しいです」
いそいそとマグカップを手に取り、まずは一口。うん。美味しい。
寝起きのカフェオレ、それからもうすぐ出てくる夜ご飯。……どこの王侯貴族だ? と思ってから、奥さんがいるご家庭の諸先輩方のほとんどが、こういう生活をしているんだなぁということを思い出す。
男の人って良いな。いや、今現在、私、女だけど同じようなことしてもらってるけど。
「あ、コーヒー飲みたい! ……デス」
とって付けた丁寧語に、また牧村さんが笑った。
「タメ口で大丈夫ですよ」
「そう言うわけには」
六つも年上の人だし。
「むしろ、気安く話して欲しいのですが」
「んー、それは、またいずれ」
まだお試し期間だし。その先があるのかは分からないけど。
そもそも、牧村さんのが年上なのに言葉が丁寧過ぎると思うんだけど、崩す気ないのかな。
「じゃあ、コーヒー入れますね。さすがに豆は持ってきていないので普通のドリップコーヒーですが」
「いえいえ十分です」
ドリップコーヒーを持ってきてくれるってのが、十分すごいと思う。
私がまたあくびをしている間に、牧村さんはキッチンで手を洗ってポットにお湯を汲んでいた。
トイレに行って戻ってくると、小さな違和感。……なんだろう?
「あ、エプロンだ」
「ああ、そうなんですよ。さすがにスーツで料理はどうかと思ったので、せめてエプロンでもと思って」
そっか。さっきまでスーツ姿だった。今は上着を脱いで、ワイシャツの上に黒いエプロン。……ヤバイ。カッコいいじゃないか。
「テレビでも見てくつろいでいてくださいね」
「はーい」
反射的に答えてテレビを付けるとニュースが流れた。
放火があったとか、花粉がいっぱい飛んでいるとか。そんなニュースを見るともなしに見ていると、トンと目の前にマグカップが置かれた。
「お待たせしました」
仰ぎ見ると、牧村さんの満面の笑顔。
なんとなく気恥ずかしくなって下を向くと、ふわりと立ち上った湯気とともにかぐわしいコーヒーの匂いが漂ってきた。
「カフェオレだ」
「すみません。勝手にカフェオレにしてしまいました。大丈夫でした?」
「好きなんで嬉しいです」
いそいそとマグカップを手に取り、まずは一口。うん。美味しい。
寝起きのカフェオレ、それからもうすぐ出てくる夜ご飯。……どこの王侯貴族だ? と思ってから、奥さんがいるご家庭の諸先輩方のほとんどが、こういう生活をしているんだなぁということを思い出す。
男の人って良いな。いや、今現在、私、女だけど同じようなことしてもらってるけど。