若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「若園様のことをお考えですよね? 笑顔がとろけそうですよ」

「やだなあ、からかわないでくださいよ」

 照れ笑いをすると真鍋さんは

「その後いかがですか?」

 と聞いてきた。

「お付き合いOKもらいました!」

「なんと! やりましたね、社長」

「あ、まだ一ヶ月のお試し期間中ですが」

「お試し期間?」

「お付き合いには向いてないとか言うので、まずは一ヶ月と……まあ、少しばかりゴリ押しを」

 そう言うと真鍋さんはぷっと噴き出した。

「会長にもお見せしたかったですね。……おっしゃりはしませんでしたが、心配されてましたので」

「はい。……結婚式にも出て欲しかったし、ひ孫の顔も見せたかったですね」

「でもまあ、十分長生きされましたよ。最期までお元気でしたし、九十近くまで現役でしたし」

「ですね。でも、もうこれ以上引き伸ばすつもりはないので、一ヶ月で婚約して最短でゴールインしますよ」

「応援してます。頑張ってくださいね」

「はい。……また、お手伝いお願いするかもですが」

「お任せください。呼んでいただければ、いつでも馳せ参じます」

「心強いです」

 なんて、真鍋さんと楽しくおしゃべりして、ほのぼの良い気分で到着した料亭で、その後苦い思いをさせられるなんて、その時は思いもしなかった。



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