若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 二日ぶりの響子さんの家。
 呼び鈴を何度か慣らすと、ようやく響子さんが出てきてくれた。

「こんばんは。すみません。寝てましたよね?」

 寝ぼけまなこの響子さん。可愛いじゃないか。ごめんね、起こしちゃって。

「こん…ばんは」

 響子さんは挨拶の途中であくびを噛み殺す。

「二日ぶりですね。会いたかったです」

 たまらず思わず玄関先で抱きしめてしまう。
 響子さんのぬくもりにうっとりする。けど、抵抗される前に抱きしめた腕をほどく。強引にして嫌われるのは最悪だ。ただでさえ来週は会えないのだから、今は大人しくするのが吉のはず。
 僕の腕から解放されても、まだぼんやりしている響子さん。

「大丈夫ですか?」

 と顔を覗き込むと、

「大丈夫、です」

 と、また、ふああぁっと大きなあくび。

「すみません。今起きたとこで頭が働いてなくて」

 まったく問題ないです。眠そうに目をこする姿がまた超絶可愛いと思ってます。
 って言ったら、引かれるかな?

「起こしちゃってすみませんでした」

「大丈夫ですよ。多分、寝過ぎなんで。……えーっと、今、何時でしょう?」

「七時前くらいです」

 急いできたけど、やっぱりそんな時間になってしまった。
 途中で買い出しもしてきたし、仕方ない。

「あ……どうぞ」

 響子さんが構えることなく当然のように中に通してくれる。
 そんな変化がたまらなく嬉しかった。

「お邪魔します」

 中に入りながら、

「疲れは取れました?」

 と聞くと、響子さんは「どうだろう?」とつぶやき、首をぐるりと回した。
 そのまま「んーっ」と両手を挙げて全身で伸びをする。
 ホント可愛い過ぎだろ。

「お茶でも飲みますか? コーヒーのが良いですか?」

 家にやってきた客の台詞じゃないな、これ。と思いながらもそう言うと、響子さんは

「あ、コーヒー飲みたい! ……デス」

 とって付けた丁寧語で答えてくれた。
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