若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「そうだな……じゃあ、おにぎり作るので持って行きます?」
「え?」
「ただのおにぎりだと、さすがに味が落ちる気がするので、焼きおにぎりとか」
「え、焼きおにぎり?」
「嫌いじゃなければ」
笑顔でそう言うと、響子さんは小首を傾げて
「好きだと思います」
と言ってくれた。
はっきり好きと言わなかったのは、多分、家で食べる習慣がなかっただけだろう。上々だ。
「じゃ、すぐ作るので待っててくださいね」
「え、でも……」
そんなの申し訳ない、と続けそうなのを封じ込める。
「響子さん、大丈夫です、これは餌付けなんで。一ヶ月後に正式にお付き合いしてもらえるように、頑張ってるだけだから、やらせてください」
そっと抱きしめ耳元でささやくと、響子さんはびくりと震えた後、小さな声で
「はい」
と答えてくれた。
おにぎりを握り始める僕の側を響子さんは離れなかった。そのまま、面白そうに横で見学。
ボウルにご飯を入れて合わせ調味料を入れて混ぜる。それから、おにぎりを握る。ただ、それだけなのに、響子さんは、「へえ~」とか「なるほど」とかつぶやきながら見ている。
おにぎりを握る段になると、
「牧村さん、ホント、器用ですね」
と言われた。
多分、指先の器用さでは響子さんのが上だろうと思う。けど、多分、そう言うことじゃない。響子さんだって同じこと、絶対できると思う。けど、やらないんだろうなと思うと面白かった。
フライパンで焼くところまで来ると、響子さんの目は釘付けだった。醤油の焦げる香ばしい匂いが漂う頃になると、目がうっとり和らぐ。
「え?」
「ただのおにぎりだと、さすがに味が落ちる気がするので、焼きおにぎりとか」
「え、焼きおにぎり?」
「嫌いじゃなければ」
笑顔でそう言うと、響子さんは小首を傾げて
「好きだと思います」
と言ってくれた。
はっきり好きと言わなかったのは、多分、家で食べる習慣がなかっただけだろう。上々だ。
「じゃ、すぐ作るので待っててくださいね」
「え、でも……」
そんなの申し訳ない、と続けそうなのを封じ込める。
「響子さん、大丈夫です、これは餌付けなんで。一ヶ月後に正式にお付き合いしてもらえるように、頑張ってるだけだから、やらせてください」
そっと抱きしめ耳元でささやくと、響子さんはびくりと震えた後、小さな声で
「はい」
と答えてくれた。
おにぎりを握り始める僕の側を響子さんは離れなかった。そのまま、面白そうに横で見学。
ボウルにご飯を入れて合わせ調味料を入れて混ぜる。それから、おにぎりを握る。ただ、それだけなのに、響子さんは、「へえ~」とか「なるほど」とかつぶやきながら見ている。
おにぎりを握る段になると、
「牧村さん、ホント、器用ですね」
と言われた。
多分、指先の器用さでは響子さんのが上だろうと思う。けど、多分、そう言うことじゃない。響子さんだって同じこと、絶対できると思う。けど、やらないんだろうなと思うと面白かった。
フライパンで焼くところまで来ると、響子さんの目は釘付けだった。醤油の焦げる香ばしい匂いが漂う頃になると、目がうっとり和らぐ。