若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「今、食べてしまいましょうか?」

 思わず提案すると、

「はい!」

 と即答。

「焼きたてのが美味しいですしね」

 そう言って、焼きおにぎり2個をお皿に乗せる。
 少し迷って、お味噌汁もお椀2つによそった。量は半分くらい。おにぎりだけより夜食っぽい感じになる。夕飯食べたばっかりだけど。

「漬物も持ってくれば良かったな」

「あー、美味しそうですね~」

 手渡したお皿を運びながら、響子さんはうっとりと目を細めた。

「でも、これだけで十分美味しそうです」

 僕が席に着くのを待って、同時に手を合わせる。

「いただきます」

「あ、熱いので気をつけてくださいね」

「はい」

 と答えたのに、響子さんはそのままほおばり、

「あつっ」

「大丈夫ですか!?」

「だいひょうぶれす」

 はふはふと口を動かしながら、口に入れた焼きおにぎりを食べる響子さん。
 決して小動物めいた可愛い系の容姿ではないのに、その仕草がとてつもなく愛らしい。
 ダメだ。どれだけでも好きになれる。
 響子さんに見とれていると、

「食べないんですか?」

 と不思議そうに聞かれた。
 美味しそうに食べる姿をもっと見たくて、

「半分、食べます?」

 と聞いたけど、

「食べたいけど……お腹いっぱいです」

 とお腹を押さえる。その、本当はもっと食べたいのだというのが見て取れる残念そうな目が、仕草がたまらない。

「また作りますね?」

「はい!」


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