若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
ふと思いついて響子さんに声をかけた。
「響子さん、手出してください」
と自分の手を両方ともテーブルの上に出して、上向きに広げた。
「なんですか?」
と怪訝そうな顔をしつつ、響子さんはテーブルの上に両手を乗せてくれた。右手をそっと握り込む。
「え?」
細くて綺麗な手。だけど女性にしては大きい。……この手でどれだけ多くの人を救ってきたんだろう。
そんな想いが湧き上がると同時に、響子さんの手のひんやりした感覚が伝わってくる。
先週末は熱を出して寝込んでいた響子さん。触れた手も温かいを通り越して熱いくらいだった。だけど今は明らかに冷たい。
「寒くないです?」
「はい?」
「手、とても冷たいですよ?」
ああ、と響子さんは苦笑いを浮かべた。
「末端冷え性なんです」
それから、
「牧村さんの手、あったかいですね」
そう言って、響子さんはふわっと笑った。
そのささやかな笑顔が可愛くて、心臓がドキンと音を立てて飛び上がった気がした。
「よかったら、カイロ代わりに使ってください」
そう笑いかけた後、気がついたら響子さんの手のひらのマッサージをしていた。もっとこの手を握っていたいと思ったら無意識で。そんな自分をいい年してと思いつつ、これが本当に大切な人への感情なんだなと実感する。これまで付き合った相手には一度も感じたことのないものだったから。
ハンドマッサージなんてやってもらうことはあっても人にやるのは初めてだ。それでも、見よう見まねでそれっぽく揉んでいると響子さんの表情がみるみる緩んできた。至福、といった表情がたまらなく愛しい。
これで少しでも疲れが取れると良いのだけど、焼け石に水かな?
右手が終わり、左手も……と思ったところで、店員さんが戻ってきた。
「お待たせしました」
その声を聞きながら、名残惜しいけど響子さんの手を離した。
「響子さん、手出してください」
と自分の手を両方ともテーブルの上に出して、上向きに広げた。
「なんですか?」
と怪訝そうな顔をしつつ、響子さんはテーブルの上に両手を乗せてくれた。右手をそっと握り込む。
「え?」
細くて綺麗な手。だけど女性にしては大きい。……この手でどれだけ多くの人を救ってきたんだろう。
そんな想いが湧き上がると同時に、響子さんの手のひんやりした感覚が伝わってくる。
先週末は熱を出して寝込んでいた響子さん。触れた手も温かいを通り越して熱いくらいだった。だけど今は明らかに冷たい。
「寒くないです?」
「はい?」
「手、とても冷たいですよ?」
ああ、と響子さんは苦笑いを浮かべた。
「末端冷え性なんです」
それから、
「牧村さんの手、あったかいですね」
そう言って、響子さんはふわっと笑った。
そのささやかな笑顔が可愛くて、心臓がドキンと音を立てて飛び上がった気がした。
「よかったら、カイロ代わりに使ってください」
そう笑いかけた後、気がついたら響子さんの手のひらのマッサージをしていた。もっとこの手を握っていたいと思ったら無意識で。そんな自分をいい年してと思いつつ、これが本当に大切な人への感情なんだなと実感する。これまで付き合った相手には一度も感じたことのないものだったから。
ハンドマッサージなんてやってもらうことはあっても人にやるのは初めてだ。それでも、見よう見まねでそれっぽく揉んでいると響子さんの表情がみるみる緩んできた。至福、といった表情がたまらなく愛しい。
これで少しでも疲れが取れると良いのだけど、焼け石に水かな?
右手が終わり、左手も……と思ったところで、店員さんが戻ってきた。
「お待たせしました」
その声を聞きながら、名残惜しいけど響子さんの手を離した。