若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 そう思っていると、響子さんの頬がふっと緩んだ。

「いつも、色々とありがとうございます」

 ふわっと優しい笑顔を浮かべた響子さんがあまりに愛しくて、思わずまたギュッと抱きしめてしまった。

「すみません。……つい」

 抱きしめたまま、響子さんの耳元で囁くように言った。

「響子さん、大好きです」

 気がつくと、響子さんの腕が僕の背中に回っていた。
 少しずつ近くなっていく距離。響子さんのぬくもりと幸福感で身体が満たされていく。
 ああ幸せだ。ずっとこうしていたい。このままずっと響子さんのぬくもりを感じていたい。
 もう今日は響子さんちに泊めてもらうとか、……いやダメだ、多分まだダメだ、多分て言うか絶対ダメだ。落ち着け自分。警戒されたら台無しだ。急がば回れだろ!?
 冷静になろう冷静になろうとしているのに、まったく心が落ち着かず響子さんを離せずにいたら、響子さんの腕が僕の背中から離され、そうして僕の身体をそっと押した。
 その仕草にようやく理性が戻ってくる。
 
「おやすみなさい」

 響子さんに言われて、離れがたい気持ちに蓋をして渾身の笑みを浮かべた。
 ……今日の響子さんの眠りが健やかなものでありますように。

「おやすみなさい。いい夢を」
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