若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「もしかして、この前迎えに来てた……」

 悩んでいる間に高橋先生が核心をついてきた。

「ああ、そう。その人です」

 嘘もつけずに正直に言う。

「昨日の夜?」

「はい。ご飯食べに行って」

 昨日の店、美味しかったな。また行きたいなぁ。
 ファミレス代わりに一人で入るには敷居が高いし、道中寝てたせいで店の場所が分からないから行けないけど。

「そう、ですか」

 話は終わったとばかりカップの味噌汁を手に取る。袋に入っていたお箸を取り出してクルクル混ぜる。良い感じに混ざりカップを手に取ったところで、

「あの!」

 と高橋先生に突然大きな声で話しかけられ、さあ飲もうとカップを持った手が空中で止まる。

「今日、夜食べに行きません?」

「今日、当直ですよ、私」

 今日は少しでも寝られると良いな。

「……あ。じゃあ、明日!」

「休みなんで来ないです」

「じゃあ、明後日は?」

 高橋先生、今日はやけに食いついて来る。
 明後日って、土曜日?

「響子先生、外来入りますよね」

「確か」

「土曜日だし、多分、早く上がれるだろうから夕飯どうですか?」

「えー」

 てか、お味噌汁飲んでいいかな? 冷めちゃう。
 早めに出てきて、せっかくゆっくりできると思ったのに気がつくと偉い先生方が出て来る時間が目前だ。

「響子先生の好きなものをご馳走しますよ」

「考えときます」

 最近色々もらっているし、そもそもお世話になってる先輩だし、一刀両断には断りにくくてそう言うと、高橋先生は嬉しそうに笑った。
 本当は人付き合いは苦手だし、そもそも面倒だけどたまには付き合わなきゃダメかなぁ。
 ようやくお味噌汁を飲めると口をつけると、少し冷めて良い感じの温度になっていた。


   ◇   ◇   ◇
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