若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「アフリカも!?」

 まだ行ったことがない、いつか行ってみたい国。その時はアフリカと一言にいってもいくつもの国に分かれてはいることすら知らなかった。

「ライオンとかキリンとかいるんでしょう?」

「ああ、いるぞ。もちろんアフリカも行けるぞ」

「遊びに行けるの?」

「幹人、遊ぶだけじゃなくて仕事で行けるんだぞ」

「おしごと?」

「ああ。アフリカの国の人たちが、毎日綺麗な水を飲んで元気に生活できるようにするお手伝いができるんだぞ?」

 その頃好きだった絵本にどこかの団体の活動を描いたものがあった。井戸を掘ったりトイレを作ったり産業を起こしたり。思えば、あの絵本は祖父がプレゼントしてくれたものだった気がする。
 多分、くれた時にはこんな話しにつながる予定はなかったのだろう。だけど、祖父の話はアフリカという遠い国に興味津々だった僕には効果満点だった。

「スゴイ! おじいちゃん、スゴイね!」

 その時の僕の目は輝いていたと思う。

「どれ。写真を見せてあげよう」

「写真?」

「爺さんがアフリカに行った時の写真だよ」

「おじいちゃん、行ったことあるの!?」

「もちろんだとも」

 その後、祖父の膝の上でアフリカだけじゃなくたくさんの写真を見せられた。舗装されていないアフリカの田舎道、ヨーロッパの古い街並みに溶け込む店舗、高層ビルの立ち並ぶニューヨークの摩天楼を背景にした大きな看板、タイの真新しいオフィス、インドネシアの建設現場……。
 祖父は分かりやすい言葉で、そこで祖父が、祖父の会社が何をしたのかを教えてくれた。

「爺さんの会社を継ぐかい?」

「うん。つぐ!」

 跡を継ぐという意味などまったくわからないままに、その日、僕は祖父の跡取りになると自分で決めた。


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