若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
25.
 午前十時。
 朝一の会議から戻ると、秘書が声をかけてきた。

「社長、今日の夜の会食ですが」

「うん。何?」

「開始を一時間遅らせて欲しいと連絡がありましたので、OKしておきました」

「了解」

 別に後ろの予定はないから遅くなる分には問題ない。

「十九時半から会食スタートです。外出先から直接のご予定でしたが、時間も中途ですし一度戻られますか?」

「悩ましいな」

 外出先での会合は十七時半までで終わる。外で時間を潰すには待ち時間が多過ぎだ。
 ……でも、そうだな、うん。もしかして、これはちょうど良いのではないだろうか。
 そう思うと、思わず顔がニヤけてしまう。

「戻って来るから明日の仕事出しておいて」

 前倒しで仕事を片付けて、明日は早く帰ろう。
 響子さん、明日は当直明けで昼間に寝てるはずだから、早い時間に行っても家にいるはず。

「後もっと先のものも、前倒しできそうなのは洗いざらい出しておいてくれる?」

 出張から帰った後、バタバタしないように、一週間ぶりの響子さんを堪能できるように、更に先のものも片付けられたら尚良しだ。

「なるほどです。了解しました。今日中に書類仕事が片付くのなら、明日は十六時半には出られますよ。予定、ブロックしておきますね」

 秘書が僕の思考を読んで生暖かい視線を送って来た。だけど、気にしない。微妙な目で見られるだけで協力が得られるのなら、むしろありがたいってものだ。

「気が効くな。ありがとう。頼むよ」
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