若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「……あ、いや、披露宴は後からにして、先に式だけ上げるというのはどうかな、と。
 けど、悪い。ここまで来ると完全にプライベートの話だな。自分で考えるよ」

 披露宴には会社関係の人も大勢来るだろうから、半分仕事とも言える。けど、式だけ別でするなら、これは自分たちだけ、もしくは家族までの話だろう。

「え、いえ、調べますけど、その、つまり……?」

「響子さんは多忙だし、親族もいらっしゃらないみたいなので、披露宴はするにしても後回しにして、まずは式だけ挙げて一緒に暮らしたいな、と」

 そう説明すると秘書はクスッと笑った。

「入籍だけ先に済ませて、じゃないんですね」

「……入籍だけで良いと思う? 入籍して一緒に暮らし始めれば良いのかもだけど、響子さんのウェディングドレス姿は見たいでしょ? けじめとして、二人だけでも式だけ挙げてからのが良いかなと思ったんだけど」

 教会だとウェディングドレスだけど、神式だと白無垢か?
 ああ、響子さん、白無垢も似合うだろうなぁ。

「なるほど。結婚式して入籍して、披露宴だけ後にしようと言うことですか」

 秘書は首を傾げた。
 そんなにおかしなことを言っているか? まあ、確かに結婚式と披露宴は普通セットになってるもんな。
 いやでも、うん、そうだ。やっぱり入籍して一緒に暮らすのが先だ。それが名実ともに響子さんの人生のパートナーになる最短距離だ。最短距離は大切だ。
 まずは入籍して、一緒に暮らし始めて、落ち着いてから結婚式と披露宴……。いや、でも、既に夫婦になっているのに結婚式? 結婚式って、結婚の儀式だよな? 公的に夫婦になってる二人が「結婚します」って儀式するのって、どうだ?
 やっぱり結婚式だけは先に……。
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