若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「幹人か? どうした?」

「父さん、突然すみません。ちょっと教えて欲しいんですが」

 と響子さんの容態を伝えアドバイスを求めた。

「ただの風邪なら一晩様子を見ても大丈夫だ」

「お医者さんなんですよ。すごく疲れた顔をしていて」

「医者?」

「若手の脳外科医さんです。夜勤明けだったと思います」

「そりゃ過労からの風邪かな。と言うか、なんでそんな人と?」

「いえ、偶然」

 そう偶然、今朝運命の人に出会いました!と言いたかった。けど、響子さんがいつ目を覚ますか分からない状態では話しにくい。父も僕に医者の友人がいないのは知っている。細かな個人情報を言わずに話したのもあり、父は響子さんが親しい相手ではないと思っている。
 いえ、これから親しくなる予定です。彼女は僕の運命の人です。と喉元まで出かかるが気合いで止める。
 順番は大切だ。先に響子さんとの距離を縮めなくては。

「偶然?」

 父は不思議そうにはしていたけど、突っ込んではこなかった。

「今日は泊まるのか?」

「ちょっとなんとも言えないんだけど」

「うん。帰っても帰らなくても大丈夫だ。しっかり看病してあげなさい。……他に聞きたいことは?」

 お言葉に甘えて、どの薬がいいかとかもしも熱が上がり過ぎたらとか根掘り葉掘り聞いてみた。父はやけに嬉しそうにとても丁寧に教えてくれた。
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