若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「はい」

 なんて素直な反応。
 ダメだ。また心臓がバクバク鼓動を打ち始め、全身に多幸感があふれ出す。

「お腹が空きすぎて力が入らないです」

 響子さんは困ったようにそう言った。
 可愛すぎだろ!?
 いやそうじゃない。早く何か食べさせてあげなきゃ。何かって、お粥か。 

「準備しますね。と言ってもインスタントですが。卵粥で大丈夫ですか? 梅もありますが」

「卵が良いです」

 良かった。卵は好きみたい。タンパク質も摂れるし、食べられるならそっちの方が良い。

「はい。了解です」

 卵粥のパックを取り出し、

「あ、キッチン使わせてもらいます」

 と念のために声をかける。

「はい」

 体調悪いだろうに、いちいちちゃんと返事をくれる響子さんが愛しくて仕方ない。
 ……出会ってまだたったの半日でこの反応。他ならぬ自分じゃなきゃ危ないヤツだと思っただろう。
 ダメだもう少し押さえなきゃ。品方向性、品方向性。理性、理性。

「電子レンジ借りますね」

 お粥をレンジで温めている間にスポーツドリンクで水分補給してもらおう。
 気だるげに身体を起こした響子さんは寝起きだからか熱のせいか力が入らなさそうだったので、グラスを持つ手をそっと支える。コップを傾けると響子さんはほぼ一気に飲み干し、フーッと肩で大きく息をした。その至福といった表情がたまらない。
 ああそうか。
 多分、響子さんは朝の出会いから今この時まで何も食べていないし何も飲んでいない。
 熱も高いし、やっぱり病院に運んで点滴とか打ってもらった方が良かった? ……いや、自分でこれだけ飲めてれば良いのか? こんな時間にお粥食べるって言うくらいだし大丈夫だろう。

「そちらのテーブルで食べますか?」

 と口にしてから思い直す。

「……いや、多分、やめた方がいいですね。今日、何度も立ちくらみを起こしてますし。ベッドに運ぶので待っててください」

「お言葉に甘えさせてもらいます」

 ベッドの上に座り、響子さんは気だるげに壁にもたれかかっていた。
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