若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「え、本当に?」

 私が肉団子と言っていたくらいで、我が家の鍋に入れるつみれは鶏肉だった。

「まだ肉が残っているので、ちゃちゃっと作ってきますね。それ食べながら待っててください」

 笑顔がまぶしい。
 食べながら待っていてと言われたけど、気になって台所の方をチラチラ見てしまう。
 牧村さんは最初にネギを刻み、次に冷蔵庫から肉を出すと今度は手際よく肉も刻み始めた。トントンとリズミカルに響く包丁の音。
 本当に料理できるんだ。
 ……できるって言うか、かなり手際が良い気がする。少なくとも、私より料理上手だと思う。
 そんなことを考えていると、ボウルに肉、ネギ、それから何やら色々入れて手で練り込みながら、牧村さんはこっちを向いた。

「冷めないうちに食べてくださいね。もうできますから」

「はい」

 うん。確かに、せっかく作ってもらったんだ。あったかい内に食べなくては。
 ポン酢をかけて、白菜からまずは一口。
 美味しい。
 次はネギ。それから、豆腐。

「あつっ」

 慌てて水を飲む。
 春菊、えのき、鶏肉。夢中で口に運ぶ。

「お口に合いましたか?」

 気がつくと、牧村さんが戻ってきていた。

「ムチャクチャ美味しいです」

 そう答えると、

「それは良かったです」

 と、本当に嬉しそうに笑ってくれた。

「つみれもすぐ煮ますね。その前に二杯目はいかがですか?」

「お願いします」

 とんすいを差し出すと、また同じようにバランス良く具材を入れてくれる。

「手際、良いですね」

「そうですか?」

 笑いながら、牧村さんはつみれを器用にスプーンで落とし始めた。

「やります」

 と手を伸ばす。
 子どもの頃、つみれを落とすのは私の役目だった。つみれの元は作れないけど、これならできる。

「良いんですか?」

「むしろやりたいです」

 そう言うと、牧村さんは「じゃあ、お願いします」とつみれの入ったボウルを渡してくれた。



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