若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 十二時を過ぎても、響子さんは目を覚まさなかった。
 すやすやと気持ちよさそうに寝ていたので起こさなかったけど、多分、適当なところで起こして食事を食べてもらってから、もう一度寝た方が良い。
 テーブルを拭いてから、カセットコンロをセットし、とんすいとお箸をを並べる。
 それから鍋に火を入れ、沸騰したところで準備していた野菜を煮込みに入る。

 準備ができたら声をかけようと思っていたら、鍋がぐつぐつと音を立て良い匂いを立て始めた頃、響子さんが目を開けた。
 最初、とても不思議そうな顔をしていた。

「目、覚めました?」

 声をかけると、パチッと目が合う。
 寝ぼけ眼が、本当にものすごく可愛い。
 出会ったばかりで、こんな顔を見せてもらって本当に良いのか? ダメと言われても見せてもらうけど。

「……牧村さん?」

「はい。何でしょう?」

「……匂いが」

「ああ、食べやすいかなと思ってお鍋にしたんですが、大丈夫でした? もしかして、苦手でした?」

 鍋が苦手な人も少ないと思うけど、もし苦手だったら大失敗。
 そうしたら、急遽、鍋焼きうどんか何かにリメイクしよう。

「いえ。……好きです」

「それは良かった。今、一時過ぎです。少し遅めの昼ご飯。いかがですか?」

「食べます」

 響子さんは、今度もまた素直に食べると言ってくれる。そんな姿がたまらなく可愛い。
 でも、今朝や昨日とは違って、今度は僕が作った手料理。今更だけど、変な物が入ってないか心配にはならないのだろうか? 信頼してもらえてると喜んでも大丈夫?
 まあ、寝込んでる女性の家に上がり込んでる段階で、そんなところを警戒しても仕方ないよな。もし僕がおかしな人間だったら、既に大変なことになっている。

「すぐ用意しますね」

 ガスコンロから、テーブルのカセットコンロに土鍋を移動させていると、響子さんがとても不思議そうな顔でカセットココンロや土鍋を見ていた。

「すみません。響子さんの側を離れがたくて、実は鍋と材料は家から持ってきてもらいました」

 きっと、気になってるのはここだろうと自己申告。
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