若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 家に帰ると、牧村さんは慣れた仕草で買ってきた食材を冷蔵庫にしまったりシンクに置いたり。

「あ、もしかして着替えます? 僕、一度外に出ましょうか?」

「このままで大丈夫です。えーっと、何か手伝いましょうか?」

 なんか申し訳なくてそう言うと、牧村さんは嬉しそうに笑ってくれたけど、

「大丈夫ですよ。一日仕事してお疲れでしょう? ゆっくりしていてください」

 と、そんな返事が返ってきた。その上、

「あ、お茶でも飲みます? コーヒーも紅茶もありますよ」

 と満面の笑顔で聞かれた。
 結局、牧村さんに入れてもらった緑茶を飲みながら、滅多に見ないテレビを付けてのんびりニュースを見る。
 そんなまったりした時間を過ごしていると、一通りの仕込みが終わった牧村さんが片手に急須、片手に湯呑みでやって来た。

「お茶のおかわりいかがですか?」

「ありがとうございます。お願いします」

 てか、その急須も家から持ってきたんだろうか? 私の湯呑み、牧村さんの湯呑みと同じ柄だけど、そもそも我が家には急須も湯飲みもない。お茶っ葉でお茶なんて入れないし。
 牧村さんはテレビを遮らないように私の斜めの位置に座って、お茶のおかわりを入れてくれた。その後、自分のお茶も注ぐ。

「お茶、美味しいです。葉っぱから入れられるんですね」

「ありがとうございます。でも、葉っぱを入れてお湯を注ぐだけですよ?」

 すみません。分かってても、私には無理です。



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