若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「ありがとうございます」

 本当に見ず知らず(?)の人からこんなものを受け取って良いのかと考えるのすら億劫だった。

「いつかお礼しに行きます」

 さすがにもらいっぱなしはダメだろうと、そう告げて頭を下げると、また立ちくらみ。
 ダメだ。今日は本当におかしい。
 いや、寝不足は解消した。だとしたら、これはどう考えてもエネルギー不足。もう丸一日以上何も食べていない。
 なんか食べなきゃ……。
 そうだお粥入ってるって言ってたよね? ありがたく頂こう。
 そう思いながら、壁に身体を預けて立ちくらみが治まるのを待っていると朝と同じように額に手を当てられた。

「すごい熱ですよ」

「……そうですか?」

 頭は痛いし寒気はするし、エネルギー不足じゃなくて風邪?
 どっちでも良い。とにかく食べて寝るしかないだろう。

「寝れば治るんで。薬、ありがたく使わせてもらいます」

「声もガラガラです」

「風邪ひいたっぽくて」

 てか、もう帰ってくれないかな。立ってるの、そろそろシンドイ。

「若園先生!?」

 ん? この人に名前教えたっけ?
 ああ、表札出してるし、名刺も……。
 気が付いたら座り込んでた。

「大丈夫ですか!?」

 いやだから、早く帰ってくれって言ったのに。いや、まだ言ってなかったっけ?
 てかさ、大丈夫って聞かれるまでなくどう見ても大丈夫じゃないだろ。まあ、でも普通聞くよね。

「失礼します」

 本日二回目。力強い腕に支えら抱きかかえられたところまでは覚えている。
 そこで私の意識はぷつりと途切れた。

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