若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 レジに向かいながら、

「今後の参考に。他にも好きなものってありますか?」

 そう聞くと、

「あー、牡蠣フライとか好きです。レモンとタルタルソースかけると最高ですよねー」

 とうっとり答えてくれる。

「牡蠣フライ、美味しいですよね」

「後ですねー、アジのフライとかも良いですねー。それから、エビフライでしょう? あ、なんかフライばっかですね。でも、私、天ぷらも好きです。かき揚げとか、タマネギが甘くてすごく美味しくって」

 響子さんは本当に夢見るような表情で楽しそうに語ってくれた。
 うん、響子さん。待っててください。それ全部、作りますからね?

「揚げ物ばっかですね。でも、コンビニとかファミレスの揚げ物、あんまり美味しくないんですよね……」

 なるほど。普段はコンビニかファミレスなんですね。
 同じ外食でも、本格的な料理を食べさせてくれる店なら気に入ったのかも知れないけど、どうやら響子さんは食べるものにもこだわらない質のようだ。もしかしたら、ただ忙しさくて食べに行く気にならないだけかも知れないけど。

 大丈夫です。揚げ物でも何でも作ります。響子さんが食べたいものは、全部。ぜひ作らせてください。
 とはいえ、一人暮らしで揚げ物をするほど料理好きではなかった。家に帰ったら早速、揚げ物のコツを調べなくては。
 最初は何にするか? 食材にこだわらず、牡蠣フライ、アジのフライ、エビフライを練習しておこう。ああ、ウズラ卵のフライなんかも良いかも。
 次に、天ぷら。かき揚げ必須で、それ以外のものも作れるようになっておくと良いだろう。肉も魚も好きと言いつつ、響子さんの言葉に上がってくるのが魚中心だから、キスの天ぷらとか、イカの天ぷら、そうそうエビ天も良いかも。
 楽しみにしていてください、響子さん。

 でも、その前に、まずはブリの照り焼きで合格点をもらうべく頑張らなくては。
 僕は買い物かごの食材を覗き込み、買い忘れがないことを確認した。
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