若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
15.
 響子さんの家に着くと、もう十九時。急いで作れば、二十時までには食べられるかな?
 最初にお米をといで炊飯器のスイッチを入れる。次に豚汁の具を切って煮込みに入る。それからほうれん草を茹でて白和えを。最後にブリ照りの合わせ調味料を用意したら一段落。

 響子さんはテレビのニュースを見ながら、僕のいれたお茶を飲んでのんびり休憩中。
 肩でももんであげたいところだけど、料理しながらは難しいし、それは、もう少し仲良くなってからさせてもらおう。
 そうだな。このちょっとした空き時間、せっかくなので一緒にティータイムはどうだろう? ただの自分へのご褒美だけど。
 お湯を沸かして二煎目のお茶をいれ、自分の湯飲みも持って響子さんの元に向かう。

「お茶のおかわりいかがですか?」

「ありがとうございます。お願いします」

 にこっと笑って湯飲みを差し出してくれるので、そこにおかわりのお茶を注ぐ。次いで、自分の湯飲みにも。
 ちなみに、この急須と湯飲みも自宅から持ってきた。どこからかのもらい物のペアの湯飲みと急須セット。マグカップでいれるより雰囲気が良いだろうと持ってきてしまった。他に、米も自宅から持参した。

「お茶、美味しいです。葉っぱから入れられるんですね」

「ありがとうございます。でも、葉っぱを入れてお湯を注ぐだけですよ?」

 お茶は祖父が好きだったので、何となく覚えた。同じお茶っ葉でも入れ方一つで味がまったく変わってしまうのが面白いと思う。

「ご飯、もうすぐ炊けるので、そうしたらブリの照り焼きを作りますね。あと少しお待ちください」

「はい。楽しみにしています」

 響子さんは僕の後ろにあるキッチンに目を向け、嬉しそうに答えてくれた。
 既に室内には豚汁の匂いや間もなく炊き上がるご飯の匂い、美味しそうな食事の匂いが満たされていた。



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