若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 夕飯を一緒に食べて、後片付けをして、夜九時過ぎにはお暇を告げる。
 正直寂しい。もっと一緒にいたい。もっとというか、ずっと一緒にいたい。
 だけど、響子さんは明日も仕事だし、早く休んだ方が良い。いくら今日元気だからと言って、週末寝込んでいた病み上がりなのだから。

「響子さん、明日の朝はすみません、仕事があるので来られないんです」

「あ……はい。月曜日ですもんね」

 響子さんは小首を傾げて僕を見た。
 少しは寂しいと思ってくれているのかな? だと良いな。

「ご飯は保温にしてありますし、豚汁は余分に作ったのでお鍋にまだ残っています。少し温めれば食べられますので、朝食に食べてくださいね?」

 ご飯も豚汁も後一食分くらいにしてある。
 まだ寒いから大丈夫だと思うけど、傷むと怖いから。響子さん、そういうことも気にしなさそうだし。

「えーっと、……はい」

 その微妙な表情と返事に、冷蔵庫に入っていたのが食パンと牛乳だけだったのを思い出す。それを食べるくらいなら、豚汁とご飯でも大丈夫じゃないかと思うんだけど、もしかして、家で食べていないのだろうか? ……あの二つ、賞味期限を確認した方が良かったかも?
 だけど、一瞬ためらうような顔をした後、響子さんはにこっと笑い、

「明日の朝、いただきます」

 と言ってくれた。

「明日の夜は何時までの勤務ですか?」

 今日と同じなら、仕事を終えた後に来られるかも知れない。
 何なら、毎日、早朝シフトで仕事をして、五時には終わらせてここに通い詰めたいくらいだ。

「あー、明日は夜勤なんで火曜日の朝までですね」

「それは大変そうですね。お疲れ様です」

 大きな病院に勤めるお医者さんには夜勤がある。最初にあった金曜日も夜勤明けだったのを思い出す。
 ホント、ハードな仕事だと思う。
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