高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―
好きな人に自分だけを見ていればいいと言われたら、こんな、嫉妬めいた強い眼差しで訴えられたら、抗えない。
すがるように上条さんの首に腕を回すと、それを合図にして唇が重なる。
すぐに深まったキスに無意識に肩を跳ねさせた私を、上条さんが安心させるように優しく抱き締めてくれる。
「ん……」
キスを繰り返しながら服がゆっくりと脱がされていく。
初めてのときはお酒の力も手伝ってか、もう少し脱がし方が荒かった覚えがあるので、そんな部分でもあの時とは気持ちが違うのだと言われているみたいで、嬉しさと恥ずかしさが混ざる。
さっき、上条さんは、今後私を傷つけるのは自分だ、ということを言っていた。
でも、触れ方も、私の表情をうかがう眼差しも、私を傷つけないように気を遣ってくれているのがありありとわかり、心の中があたたかいもので満たされていく。
「あ……っ」
下着を脱がされた胸に直接舌で触れられ思わず声がもれた。
柔らかい舌の感触にじわじわと快感が広がり、体の芯が熱を帯びていく。
信用して体を預けるのは怖い。
だって、いずれ手を離されるかもしれないから。
その時またズタズタになるのが、怖い。
でも……それでも、私はやっぱり上条さんが欲しい。
未来の可能性に怯えるのではなく、今、上条さんが伝えてくれる想いと向き合いたい。
――だから、怖くてもいい。