高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―
私からも上条さんに触れたくなって手を伸ばす。
上条さんの着ているシャツのボタンを外し終え、裸の胸にそっと手を這わせた途端、それを止められた。
「……待て」
私の手を握った上条さんが、そのままソファに縫い付けるようにして押さえる。
困惑した顔で見てくるので「あの、私からも触りたくて」と説明すると、上条さんは困ったような笑みをこぼした。
「後でにしろ。今は俺が触ってる」
「でも、私も好きなので上条さんに触りた……あ、待って……んんっ」
私の抗議を抑え込むように弱い部分に触れられ体が跳ねる。
静かなこの部屋に自分の声が聞こえるのが、やたら恥ずかしく思え両手で口を塞ぐと、それをチラッと見た上条さんが口の端を上げた。
両手がふさがったせいで、これでは私からは触れられない。
上条さんの思うがままにされているようで悔しさも感じたけれど、こみあげてくる気持ちよさに、気付けばそんなのはどうでもよくなっていた。
「……ん」
体を重ねたあと、上条さんはしばらく動こうとはしなかった。
だから不思議に思い視線だけで見上げると、それを待っていたようにすぐに視線が重なる。
いつも感情なんて見つけられない瞳に、今はしっかりと情欲が滲んでいて、嬉しさが生まれる。
上条さんも私を欲しがってくれていることに幸せを感じずにいられない。
私を組み敷いている体勢の上条さんにそっと手を伸ばす。
頬に触れても今度は止められず、その手を上から握られた。
強い想いのこもった眼差しに射抜かれ、一瞬息が詰まった。