高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


「今までできなかったぶん、反動がすごそうだよな」と笑う後藤に眉を寄せる。
後藤が言う反動は、恋愛という意味ではなくそういう行為を指しているとわかったからだった。

「後藤と一緒にしないで。私は気持ちが通じ合った上でしかしない。上条さんとだって、この間のがイレギュラーだっただけで、今後は上条さんの気持ちが私に向くまでしない。それこそトラウマの二の舞になるでしょ。だから、片想いを精一杯頑張って、あとは成り行き次第」

そう言い切ると、後藤はポカンとした後、「は? いや、待てって」と苦笑いを浮かべた。

「片想いって、上条さんにか?」
「そうだけど……何か問題ある?」
「だって、相手は起業して成功しているような高嶺の花なんだろ? そんなの狙ったところでうまくいく可能性はだいぶ低いって。だったら今回のことは男を克服できたっていうきっかけとしてだけ捉えておいて、違う男探した方が楽だろ」

言われている意味はわかった。
たしかに、レストランやらカフェやら手掛けたお店をことごとく黒字経営してしまう上条さんは高嶺の花だ。能力があるだけじゃなく、見た目だってモデル並みだし、一緒にいて楽しかったし性格だって悪くない。

そんな上条さんの周りには素敵な女性がそれはもうたくさんいるだろうし、いくら私が手を挙げたって選んでもらえるわけがないのだ。

持っているスペックだとかが違いすぎる。
頑張ったところでうまくいく可能性は相当低い。

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