高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―
今のは現実だろうか。
それとも私の想像力が見せた白昼夢だろうか……と本気で考えながらも携帯を操作すると、発信履歴にはしっかりと上条さんの名前があり、じわじわと嬉しさが湧いてくる。
耳にはしっかりと先ほどの上条さんの声が残っていて、口の端が自然と吊り上がった。
上条さんにスケジュールを聞かれた緑川さんがどんな顔をしているかを考えると怖いけれど、今は幸せだけを噛みしめておこうと、緑川さんのことは頭の中から追い出す。
そして、後藤に報告をするためにスキップしたい気持ちを抑えて店内に戻ったのだった。