石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~
吐く息が、周りの雪に溶け込むように白い。
寒くて凍えてしまいそうだったが、ルルティアナは迷わず歩き続けた。
雪の重みでこうべを垂れた枝をかき分けるようにして先に進めば、うっそうとした林の中にぽっかりとできた雪原にたどり着く。
その中央に立つ人影。
今日も無事にそこにいてくれたという事実にルルティアナは微笑む。
雪を踏みしめながら近づいて、頭や肩に積もった雪を丁寧に落してやる。
触れる手のひらが痛みを訴えるほどに冷たい頬を温めるように撫でながら、ルルティアナは申し訳なそうに眉を下げた。
「なかなか来られなくてごめんなさい。トレシー様もお変わりがないようでよかった」
ルルティアナが話しかけてもそれは喋ることはない。
何故ならば彼は、物言わぬ石像であった。
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