石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~
雪靴を履いていても、冬の山は少女一人で歩くには険しすぎるものではあった。
何度も雪に埋もれながら、地面を舐めるように眺めて花を探した。
見つけないと、家にも入れてもらえないかもしれない。
ルルティアナは深いため息を吐く。
実母が生きていればと何度思った事だろう。
幼い記憶の中では、父親は今ほど冷酷ではなかった。
寒い冬は暖炉の前に座った母の膝に乗り、絵本を読んでもらっている事が多かった。父親はそんな自分に優しく笑いかけてくれることだってあった。
今ではその場所はメルリアだけのものだった。
異母妹はルルティアナが少しでも優遇されるのが許せないのだろう。
服や食事など、全てメルリアの方が良いものを与えてもらっているというのに、今日だって、たった一日先にルルティアナが誕生日を迎える事が気にくわないのだ。
悲しみに涙が出そうだったが、今泣いたら涙まで凍ってしまうと瞬きでそれを散らす。
とにかく今は早く花を探さなければ。
日が暮れてしまったら、本当に森で迷って凍え死んでしまう。
寒い、痛い、辛い。
誰でもいいから大丈夫だよと、かわいそうにと優しくしてもらいたい。
そんな切なる願いがルルティアナの心を占めていた。