Rainbow Moon 〜操遇〜
【7】悪魔の囁き
〜名古屋市警 遺留品・残留品倉庫〜
事件性のある案件の証拠品以外は、一時的にここに保管されていた。
「千佳の車は、ここにあるはずだ」
「今更、何を調べるんですか?咲さん」
係員がシャッターを開ける。
千佳の車は、すぐそこにあった。
迷わず後部座席のドアを開ける咲。
「うっ…」異臭が鼻をつく。
「咲さん、彼女は一人でしたよ?」
「昴、いいからドアを全部開けて!臭くてたまんないから」
(この腐敗臭は…多分…んっ?)
左の後部座席の足マットから、ドアの方まで、何かが乾いた跡があった。
「富士本さん、鑑識お願い」
「はいはい、了〜解」
「何です?七海の髪の毛とか?あっても不思議じゃないですよ。しかし、くっさいなぁ」
「これよ」
マットからドアへと続く黒っぽい跡。
「この感じは…血か?」富士本の所見。
「はい多分。でもこの匂いは、人じゃないわ」
人の血の匂い。
嗅いだ人は少ないであろうが、乾いて腐敗すると、独特の錆臭さを放つ。
当時、左後部座席のドアは開けっぱなしで、それが千佳の車だと分かった時には、中には千切れた紙袋が散乱してる他、何もなかった。
「これって…どこかの店のマークかな?」
まだ残っていた切れ端を、咲が広いあげる。
「あっ、それ知ってますよ僕」
「何なの?」
「最近、大曽根にショッピングモールができたでしょ、あの一階鮮魚コーナーで人気の魚屋です。自炊してるので、休みや帰りに良く寄るんです」
「それで、刺身包丁の謎が解けたわ。何でよりによって?…って気になってたのよ。千佳は、そこで魚を買い、それをおろす為に、包丁も買ったのね」
「あ!確かにあの魚屋さんでは、実演しながら、刺身包丁も売ってました」
「ちょっと待った!それじゃあ、千佳に殺す意思は無かったと言うことか?」
「恐らくね…少なくとも始めは。あの時JR中央線は、大曽根から先の運転を見合わてたのよ。信雄が降りるのは、大曽根の一つ先の新守山駅。車で出てた千佳が、会社のある千種駅まで迎えに来てても不思議じゃないわ」
誰もが羨やむくらい仲の良い夫婦。
そのフレーズが甦る。
咲の頭の中では、一連の筋読みが成り立とうとしていた。
だがそれは、シンクロニシティを覆すことを意味し、普通ではありえない、恐ろしい犯罪であった。
事件性のある案件の証拠品以外は、一時的にここに保管されていた。
「千佳の車は、ここにあるはずだ」
「今更、何を調べるんですか?咲さん」
係員がシャッターを開ける。
千佳の車は、すぐそこにあった。
迷わず後部座席のドアを開ける咲。
「うっ…」異臭が鼻をつく。
「咲さん、彼女は一人でしたよ?」
「昴、いいからドアを全部開けて!臭くてたまんないから」
(この腐敗臭は…多分…んっ?)
左の後部座席の足マットから、ドアの方まで、何かが乾いた跡があった。
「富士本さん、鑑識お願い」
「はいはい、了〜解」
「何です?七海の髪の毛とか?あっても不思議じゃないですよ。しかし、くっさいなぁ」
「これよ」
マットからドアへと続く黒っぽい跡。
「この感じは…血か?」富士本の所見。
「はい多分。でもこの匂いは、人じゃないわ」
人の血の匂い。
嗅いだ人は少ないであろうが、乾いて腐敗すると、独特の錆臭さを放つ。
当時、左後部座席のドアは開けっぱなしで、それが千佳の車だと分かった時には、中には千切れた紙袋が散乱してる他、何もなかった。
「これって…どこかの店のマークかな?」
まだ残っていた切れ端を、咲が広いあげる。
「あっ、それ知ってますよ僕」
「何なの?」
「最近、大曽根にショッピングモールができたでしょ、あの一階鮮魚コーナーで人気の魚屋です。自炊してるので、休みや帰りに良く寄るんです」
「それで、刺身包丁の謎が解けたわ。何でよりによって?…って気になってたのよ。千佳は、そこで魚を買い、それをおろす為に、包丁も買ったのね」
「あ!確かにあの魚屋さんでは、実演しながら、刺身包丁も売ってました」
「ちょっと待った!それじゃあ、千佳に殺す意思は無かったと言うことか?」
「恐らくね…少なくとも始めは。あの時JR中央線は、大曽根から先の運転を見合わてたのよ。信雄が降りるのは、大曽根の一つ先の新守山駅。車で出てた千佳が、会社のある千種駅まで迎えに来てても不思議じゃないわ」
誰もが羨やむくらい仲の良い夫婦。
そのフレーズが甦る。
咲の頭の中では、一連の筋読みが成り立とうとしていた。
だがそれは、シンクロニシティを覆すことを意味し、普通ではありえない、恐ろしい犯罪であった。