Rainbow Moon 〜操遇〜
「スゲェな、アレ」

千種(ちくさ)にある大きなゲームセンター。
そこに七海がいた。

ここには、休みの日に友達と良く来ていた。
七海はシューティングゲームが好きで、今日はバイオハザードの最新4Dゲームを陣取っていた。

ゴーグルを通して、まるで実際の空間にいる感覚で、周囲から迫るゾンビを次々と両手のガンで打ち砕く。

いつしか、マニアたちが集まる。

「カッケェ〜!彼女なかなかイケてるやん」

容姿淡麗な彼女は、この店の密かな人気者であった。

既にこの店の新記録を達成し、誰も見たことのないラストステージ目前。

しかし、ボスキャラの圧倒的な強さ。
さすがに一人でのクリアは無理かと思った時。
隣に若い男性が加勢に加わった。

彼はこの地区を担当している宅配員で、店への配達ついでに涼をとり、ゲームをプレイしていた。

そしてついに、ラストステージ。
最強のラスボスが立ちはだかる。

結果は、この二人でも倒すことは出来なかったが、集まったゲーム仲間たちから、大きな拍手が送られた。

配達員が七海を手招きし、自販機コーナーで冷たいジュースをおごる。

彼女が話せないことも、彼を含め、店の常連客のほとんどが知っていた。

「いやぁ、いいところで来てよかったぁ〜。いつもながら、すごいね七海さんは」

とんでもない、と手を振る七海。
そして彼の耳元で囁いた。

「あ…りがと…」

微笑む七海が、ポケットからUFOキャッチャーでゲットした、大きな飴玉を一つ取り出し、彼にあげた。

バレバレの照れ隠しをしながら、配達員が店から出て行く。

時計に目をやる七海。
時刻は、17:00前。
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