地味子の元婚約者様
「彩実ちゃん!待ってたよ〜」



「学園長、お久しぶりです。それと、学園内では“彩”です」




「あぁ、そうだった。ごめんね、気をつけるよ」




このラフな方は、星桜学園の学園長。お父様の学生時代の悪友らしい。




「彩ちゃんの担任は、光崎(こうさき)先生だよ。光崎先生にしか、君のことは言ってないからね。なにかあったら、彼に言ってね」



「光崎です。よろしく、塚野」



「よろしくお願いします、光崎先生」



「うん、じゃあ行こうか。クラスに」




学園長に見送られて、光崎先生とクラスに向かう。



「俺は先に入るから。呼んだら来てね」




そう言って入っていった先生を待つことほんの1分。「はいれ」って声が聞こえて、そっと扉を開けた。




友達ができますように。そう、願いながら。





教団まで向かうところで、すごい視線を感じた。みんなが私を凝視していた。





「え、こいつやばくね?」



「こんなブスが転入生だなんて」



「期待して損した」




グサッと言葉が心に刺さった。あぁ……友達はできそうにないな。




「……はじめまして。塚野彩です。よろしくお願いします」




大丈夫。慣れてるから。




「塚野は、1番後ろの窓際の席に座れ」




「……はい」




いつでもどこでも変わらない。私は、透明と同じ。




それからのHRも、授業も、普通に受けた。みんなの好奇の目に晒されているのも、気付かないふりをして。




大丈夫。こんなの耐えられる。今までだって耐えてきたんだもん。




友達、なんて私には一生出来ないのかもしれない。





でも、それは仕方ないこと。私の、普通。




塚野彩であれ、本当の姿は篠宮彩実。




見た目を取り繕ったって、中身はおなじ。





永遠に変わらない。


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