明日が終わる、その時まで【完】
「家出の期間は?」
「うーん、長くても三日くらいかな」
「場所は?」
「まだ決めてないけど、県外で田舎の方」
「そう。お金はあるの?」
「うん。お年玉とお小遣いと、結構ある」
「これ、もう少し持っていきな」
パパは玄関の棚に置いてあった自分のお財布から5万円ほど私に差し出した。
「……ありがとう」
私はちゅうちょも遠慮もせずに、ありがたく頂戴する。
「人数は?」
「柴田と私の二人」
「へえ、16歳で男の子と逃避行か。やるなぁ~……何かあっても知らないよ?」
「何かって?」
「そりゃ思春期の男と旅をするんだからさ、色々あるでしょ?」
「あーなるほど。そっちね。そんな色気のある旅に見える?」
ウォーキングシューズ、デニム、トレーナー、登山用のガチのリュック。
これが思春期の男と旅をする格好に見えるっていうの?
「ハハハ、見えないね」
「万が一でもそんなことが起きたら、私容赦しないし」
「まあ、そうだろうね」
パパが笑っているそばで、私は長い髪を後ろで一つに結んだ。
姿見を見ながらキャップを深くかぶって、パパに向き直る。