明日が終わる、その時まで【完】
駅に着いて改札を通ると、停まっていた上り線の電車に乗り込んだ。
さすがに土曜日の朝の5時だと車内はがらがらで、私が乗った車両には誰一人いなかった。
座席の一番端に座っていると、やがて、その向かいに誰かが座った。
「おい。お前、こんな朝っぱらからどういうつもりだよ」
その声に、下を向いていた顔を上げる。
向かいの座席には、私とほぼ同じ格好をした柴田が座っていた。
文句を言いながらも、ちゃんと私が指定した通りの服装で、時間ぴったりに現れるなんて、結構素直なところがあるんだなぁ……。
思わず笑ってしまいそうになるのをぐっとこらえていると、ちょうどドアが閉まって、電車が動き出してくれた。
私は昨日の夜、柴田にだけメッセージをした。
⦅明日の午前5時5分発の上り線電車に以下の持ち物、服装で来て⦆と。
柴田からは、意味がわからない、理由を教えろといった返事が来ていたけど、すべて無視した。
突拍子もない私の指令に、もしかしたら柴田は来ないかもしれない――頭の中にそんな可能性もよぎったけど、私は賭けた。
柴田は来る。
ふざけんなって顔をして、私の前に現れる――と。