明日が終わる、その時まで【完】
「もちろん仮定だよ。捜査っていうのはいろんな角度から物事を見て、真実を探すことでしょ?」
「そうだけど……本職の警察が調べて、他殺はないってハッキリしてんだろ」
「その本職の警察が犯人だったら?」
「……」
柴田が目を見開いて私を凝視する。
「柴田、これは仮説だから、怒らずに聞いてよね」
「……別に、怒んねえよ」
「犯人はあんたのお父さん」
「だろうな」
言うと思ったとでも言いたげな顔をする柴田。
仮説とはいえ、自分の父親が疑われているのに、平然としており、私の考えなどはなから相手にもしていない様子だ。
すぐにそういう反応をするということは、お父さんがお母さんを殺すのは柴田の中であり得ないことなのだろう。
つまり、柴田の目から見ても、お父さんはお母さんを愛していたということだ。もしくは、人を殺すような人間ではないという信頼かもしれない。
「まあ聞いて。私の仮説はこう。柴田のお父さんには愛人がいた」
「そりゃすげーな」
「真面目に聞いてよ」
「聞いてる」
「で、その愛人と添い遂げるために、お母さんが邪魔になった」
「それで」
「柴田が学校に行っている間、家に戻って、お母さんを突き落とした」
「……」
「目撃者もいない。道路や駅にある監視カメラに10階の部屋は映らない。証拠もない……あったかもしれないけど、自分の管轄内ならどうにでもなる」
「…………」
さっきまで平然としていた柴田の顔が少しずつ険しくなっていく。