明日が終わる、その時まで【完】



「母さんが亡くなった翌年、親父は地元の静岡に移動願いを出していて、俺たちはそこに住んでた」

「うん」

「親父が移動した後、あの人は警察を辞めて家業の手伝いのために地元に戻った。その地元っていうのが、俺たちが暮らしてた町の隣町だった」

「……うそ」

「本当に偶然、久しぶりに会って……それで意気投合したんだと」

「ちょっと、出来すぎてるね」

「俺も、話聞いたときはそんな偶然あるんだなって思った」

「地元が同じっていうのは本当に偶然だと思うけどさ……隣町に住んでて、ばったり会うなんてある?」


地方の隣町って、結構距離があると思うけど。

偶然なら、あるかもしれないけど……。どうも腑に落ちない。

同じ職場に勤めていたなら、お互いの出身地くらい知っていたはずだ。

お父さんが静岡に移動願いを出したことも、職場の人間なら知っていても不思議じゃない。


そこまではいいとして……。


お父さんが移動してから佳代子さんもすぐに仕事を辞めて、自分の地元とはえい、お父さんが向かった場所に行くって……そこだけがちょっと引っかかる。


「柴田」

「なんだよ」

「行き先変更する」

「ああ?」

「静岡、行こう」

「……もう、勝手にしろ」


うん、勝手にさせてもらうわ。
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