明日が終わる、その時まで【完】
本当は、東北の田舎にでも行って、しばらく身を潜めて、心配した柴田のお父さんに迎えにきてもらって愛情を確かめるっていう昼ドラにありがちな計画だったけど、やめた。
お父さんと佳代子さんの地元である静岡に行けば、何かヒントがあるかもしれない。
「ねえ柴田」
「なんだよ」
「万万が一。万が一にも、柴田のお母さんの死に、お父さんと佳代子さんの関係が関わっていたら、あんたどうする?」
「――殺す」
考える余地など必要ない。
柴田は即答だった。
「じゃあさ、そのときは私も手伝うわ」
「ああっ? 何言ってんだよ。冗談でも馬鹿みてえなこと言うな」
軽い口調で返事をしたことが気に食わなかったのか、柴田が不機嫌になる。
「冗談なんかじゃない」
私は柴田を見つめた。
嘘偽りなどない気持ちを込めて、真っ直ぐに。
「私も殺す」
冗談なんかじゃないよ。
あんた一人に殺させない。
「お前正気かよ」
柴田の目に、初めて私が映った気がした。
その顔は私を馬鹿にしているのに、なぜか泣いてるようにも見えた。