明日が終わる、その時まで【完】


福沢くんとは1年生のときに同じクラスだった。

入学からずっと学年1位という優秀な成績を誇る福沢守(ふくざわまもる)くん。

男子の中では小柄で、あか抜けないメガネをかけた大人しい子っっていう印象だったけど、バカどもの悪ふざけに加担しなかっただけで高感度が爆上がり中だ。


「ああ、これ……もういいの。もういいの」


原田先生は俯いて、ぶつぶつとつぶやき始める。


「私教師に向いてなかったの……。三年で()にならなかったら教師辞めて実家の八百屋継ぐって田舎のお母ちゃんとも約束しちゃったし……。くそ田舎者の私が、都会の子に教えることなんて何もないのよ……あとは時が過ぎるのをじっと待つだけ。待つことには慣れているのよ私、雪国育ちだから。雪国は冬が長いから。家の中で春が来るのを待つの。あーあ、早く春がこないかしら」


原田先生は遠くを見つめて、「ふふふっ」と笑っていた。


「……晶ちゃん。原田先生ね、もうずっとこの調子なの」


いつの間にか私のそばにきていた小春が(かぶり)を振る。

なるほど。原田先生がぶっ壊れて使えないことはわかった。


そりゃ新卒三年目の原田先生には新学期早々の学級崩壊は荷が重いでしょうね。




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