明日が終わる、その時まで【完】
上り線から下り線の電車に乗り換えてから4時間近く経っただろうか。
時間がたっぷりあるから、新幹線ではなくあえて在来線で、時刻を気にすることなく静岡までやってきた。
「柴田、ちょっと待ってよ。あんた歩くの早い」
私とあんたじゃ脚の長さが違うんだっつーの。
「ああ、悪い」
柴田は素直に謝る。
気のせいか、静岡に着いてから柴田の表情が柔らかくなった気がする。
9歳から今年までだから、6年くらい住んでいたんだもんね。
気心が知れた場所にくれば、心も穏やかになる。
それにこっちの方が空気も美味しいし、空も広いし、人も少ないし。ここなら、今の場所よりも気を張る必要がない。
「来るのいつぶり?」
私は柴田を見上げた。
「3月の半ばに引っ越したから、ちょうど一か月くらいだな」
「そっか」
私たちは、柴田が住んでいた近くまでバスで移動することにした。
柴田は地図やスマホを見ることもなく、慣れたようにバスターミナルにある2番のバス停に並んだ。
時刻表を確認すると、あと15分ほどで次のバスがやってくるようだ。