明日が終わる、その時まで【完】
黙って空を眺める柴田の隣で、私は駅に着いて早々買った掛川茶を飲んでいた。
普段飲んでいる緑茶よりも苦みがなくて、まろやかで、ほんのり甘い。
「あー美味しい。静岡最高」
「……さっきまで物騒なこと言ってたやつのする顔かよ」
「それはそれ、これはこれ」
呆れてものがいえない様子の柴田を横目に、私はもう一口、掛川茶を飲んだ。
そんな私たちのもとに、「大吾?」という声が届いた。
咄嗟に声の方を振り向くと、70代くらいの小柄なおばあちゃんが私の隣に立つ柴田を驚いたような顔で見ていた。
「ばあちゃん、なにしてんの」
「やっぱり、大吾だね。まあまあ、こんなところでどうしたんだい? 東京に行ったんじゃなかったのかい? そちらのお嬢さんは?」
「同じクラスの佐野。佐野、俺のばあちゃん」
「ええっ! あっ、初めまして。佐野晶です」
私は柴田のおばあちゃんに頭を下げた。
こんなところでなんで? すごい偶然って思ったけど、お父さんの地元ってことは、近くにおばあちゃんのお家もあるのだろうし、家の方向が同じならバス停で会っても全然不思議なことではない。