明日が終わる、その時まで【完】
真っ先に台所に向かったおばあちゃんは、腰に白い前掛けをかけながら、「おじいちゃんにも挨拶してあげてね」と言う。
すると、柴田は茶の間から出て、「こっちだ」と私を案内するように廊下の奥へと進んだ。
どうやらおじいちゃんは奥にいるらしい。
柴田の後についていくと、柴田は和室の前で止まった。
柴田は無言でふすまを開ける――するとそこには、
「……おじいちゃん、いつ亡くなったの?」
おじいちゃんの遺影と立派な仏壇があった。
「5年前の冬。風呂入るときにすべって、頭打って。あっけないよな……」
柴田は慣れたようにおじいちゃんの仏壇の前に座った。
そして、仏壇の近くに立ててあったろうそくにライターで火をつけると、お線香を一本取って、ろうそくの火に近づける。
お線香の先に火が灯ると、白く細い煙が立ち、やがて部屋全体に独特の香りが広がっていった。
手を合わせ終えた柴田に続いて、私もお線香をあげさせてもらった。
柴田のおじいちゃん初めまして。佐野晶です。
柴田のおばあちゃんと柴田のこと、見守ってください。
「行くぞ」
「うん」
おじいちゃんへの挨拶を終えた私たちは、茶の間に戻った。