明日が終わる、その時まで【完】



おばあちゃん手作りのおかずは、どれを食べても「美味しい」の言葉しか出てこなかった。

素材の味を感じる絶妙な味付けは、コンビニやスーパーで売っているお惣菜とは全然違う。

上手く説明できないけど、おばあちゃんの作ったおかずは、使われている食材が育つために必要な、土、水、太陽を感じるのだ。

命をいただいていることを実感する味。

だから、ごはんを食べるたびに、不思議と体がエネルギーに満ちていく。


「ばあちゃんは食わないの?」

「私は朝たくさん食べたからいいんだよ」

「あっそ」

「あっ柴田、それ最後のしいたけっ」

「あ? そうだったか。悪いな」


柴田は悪びれることなく、私が最後に残していた筑前煮のしいたけを頬張った。

最後はしいたけの旨味(うまみ)で終わるって思っていたのに……。


信じられない……。

私、ちゃんと、大好きだからとらないでねって言ったのに……言ったのに。



「……うっ、うううう」

「おい、ガキみたいな泣き真似やめろ」

「ううっううっうううう」

「……は? お前、マジで泣いてんのかよ」



泣き真似でもなんでもなく、ぽろぽろ涙をこぼす私を見て、さすがの柴田もうろたえている。

というか、ちょっと引いている。


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