明日が終わる、その時まで【完】



だって、おばあちゃんが作った筑前煮なんてもう食べることなんてないだろうから、食べたかったんだもん。

だからせめて、大好きなしいたけで食事を終わりたかったのに……。

柴田のやつ……。



「うううううっ」

「おいっ、しいたけくらいで泣くなよ」

「うううううっ」

「あらあらどうしたの? 大吾、なに女の子泣かせてるのっ」


おばあちゃんが私のそばにやってきて、ティッシュで涙と鼻水を拭いてくれた。


「よしよし。ほら、もう泣かないの。せっかくの綺麗な顔が台無しだよ?」

「ううっ……ぐすっ」


あーあ、なにこの幸せ。

おばあちゃんに慰めてもらって、鼻水まで拭いてもらって、頭も撫でてもらって……。

世の中にこういう幸せがあることは知っていたけど、私には縁がないって思っていた。

柴田と出会わなければ、ずっと縁のない幸せだったと考えると、しいたけをとられたことは許せないけど、柴田には感謝しないといけないね。


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