明日が終わる、その時まで【完】
戸惑う柴田の目と私の目が合う。
「……」
「……」
どれくらい、そうしていたかはわからない。
やがて、柴田は自分の顔を右手で覆って、うなだれる。
そのせいで、私と柴田の頭が近づいた。
「……お前が人殺しになるのは、後味悪い」
前のめりになってるせいで、柴田の顔は見えないし、声もくぐもってハッキリと聞こえないけど……。
私が人殺しになるのは後味悪い? って、それって嫌ってこと?
お父さんを殺すことを止めた理由って、おばあちゃんだけじゃなくて、もしかして私のこともあったりするのかな。
それは気にしなくていいのに。
「柴田、私のことは」
「俺が、嫌なんだ」
柴田はゆっくりと顔を上げる。
顔を上げた柴田と私の目が合う。
息遣いを感じるほど近くで、視線が交じわる。
昨日の電車の中で、柴田の目に初めて私が映った気がしたけど、正直その時はあまり自信がなかった。
でも、今はちゃんととわかる。
柴田の目に、私がいる。
おばあちゃんを見ている時と同じように、柴田の心に、私が映っている。
「殺さない。殺さないよ」
「ああ。頼む」
柴田の頼みに私は深く頷いた。