明日が終わる、その時まで【完】
―――……
おばあちゃんが手術室に運ばれて、どれくらい経ったのだろう。
「君たちは柴田さんのご家族?」
おばあちゃんが運ばれた手術室の方から、テレビで見るような手術服を着たお医者さんがやってきた。
50代くらいの男性だ。
「孫です」
柴田が答えた。
「そうか。時間がないから手短に言う。柴田さんはステージ4の胃がんだ」
「「っ!」」
胃がん? ステージ4って……それって、もう末期ってこと?
言葉を失う私と柴田に、お医者さんは淡々と告げる。
「今年の初めにわかったときには、既に他の臓器に転移していた。私はご家族にお話しすることを勧めたが、家族は今年から東京で新しい生活が始まるから邪魔したくないとおっしゃっていた」
「……っでも、ばあちゃん、健康診断で脂肪が多いって言われたから、頑張って体重を落としたって」
昨日再会したとき、柴田が「痩せた?」と尋ねると、おばあちゃんは笑いながらそう答えていた。
「胃がんの末期症状になると、栄養を上手く吸収することができないんだ。食べようとすると吐き気がしたり、食欲不振になる。そうやって、体重が著しく落ちていくんだ。柴田さんは君に心配かけまいと、嘘をついたんだろう」